2023/08/03
朝餉と置き石
5時半に目が醒めた。
昨夜、ネタの21時半か22時だもん。
6時に下郷町、朝のアラートサイレンが鳴った。
前は会津鉄道の始発で目が醒めたものだが、近年ダイヤ改正で運行本数が削減して久しい。
会津田島から来る朝の列車が、湯野上温泉着、6:41、8:00
会津若松から来る朝の列車は、湯野上温泉着、7:21、8:30、
宿の裏手にある踏切の警報音で起こされなくなった。
ごはんをよそってくれるジャン妻、
いつもの定番朝餉、インゲン豆煮物、鱒塩焼きと山葵漬、漬物、納豆、海苔、ラッキョウ、牛蒡と蕗と蒟蒻の煮物、味噌汁の具は茄子と冥加と冬瓜、洋風煮物は海老、揚げ、赤ピーマン、パブリカ、蕪、青梗菜、果物はメロン、ミカン、バナナ、
ガツガツと食べ終えたのが8:20ですよ。まだまだ部屋で寛げるというもの。これが「どっかの木」だと早く部屋に戻りたいのをじーっと待ってなきゃなんないからね。
9:45、バタバタを急いで荷造りしてたら廊下から女将さんの声がする。
来客か?それも小さいお声じゃないのだ。何がおきてる?
出たら女将さんが廊下に立って窓を開けて駐車場を見て、前だの後ろだのそこで切り返すだの、教習所の教官みたいなことをやっていた。
「何してるんです?」
女将さんは困ってるように微笑まれた。お客さんのコンパクトカーが1台、宿の敷地内駐車場内から出れないのである。同じところを行ったりきたり往復したり、切り返しを何回も繰り返してるけど出れないのだ。運転手さんを見たらもういいトシしたお爺さんだった。
私のくるま以外は皆出てっちゃっていなかった。
帳場に行ったら、公道に出れないくるまの同行者がいてこれまたいい御年のお爺さん、荷物を積めないでいた。デカい荷物が2つ、宿の上がり框にデンと置いてあるのだが、土間に置けばいいものをスリッパの上にデンと置いてあって、その前の土間には私らの履物が2足置いてあるんだよ。
「荷物退けてくんないかな。履けないじゃないか」
「あ」
あ、じゃないっての。
私は靴を履いて外に出た。駐車場に廻った。コンパクトカーはまだ出るに出れないでいる。切り返す過程でこっちにぶつけられたらかなわんので私は先に宿前へくるまを移動させた。
どっかで上手くいったみたい。安堵と少しばかりの歓声で、そのくるまは出ていった。
出てったら私は心ないことを言った。
「〇〇〇〇め」
「そう言うこと言わないのっ」
「〇〇した方がいいんじゃねぇか。でないと・・・」
「いいからもう」
苦笑いする長男さん。この人(私のこと)はこういう悪態をつくひとだったのかという表情だった。
次回予約も押さえたが少し先で、紅葉シーズンの秋は何処も満室だそうである。どっかの木やF山より予約が取り難くなってきた。
さて、これだけなら、昨日の宿入りと晩餐記事にくっつけて終わるボリュームですが、敢えて2回に分けたのは、私がさきほどの高齢者ドライバーさんのことを「ヘタクソ」「返納した方がいい」と心無い悪態を放った報い?を受けたからであります。
宿を出て国道に上がり、A沼産業株式会社のGSで補給してさぁ真っ直ぐ帰ろうと。会津西街道を快走した。
道の駅たじまを過ぎてから県境を越える上り坂になる。山王大橋を渡ってしばらくした辺り、前方車線真ん中に何やら落下物があるのに気づいたが既に遅し、踏まないよう跨ぐのが精一杯だったのだが、ガリガリガリ、車体底から異様な衝撃が走った。
「!!」
あ、やっちゃったか。
「その先路肩に停めてっ」
ハザード点滅させて停車した。
まず、タイヤを見たが、大丈夫だった。ではあの異様な音は車体の底を擦った音か。石が落ちてた場所に戻った。
「何だぁこの石は?」
これは山の斜面から転がってきた石じゃないな。
産廃業者か土壌を運んでて落っことしたんだろう。
ジャン妻が「何の石かしら?」覗き込んでいるところ。
後から来るくるまは減速して避けてた。人が歩いてないこの山道で、カーヴでハンドル切ったらジャン妻がが突っ立ってたから慌てて減速したんだろう。先に石に気が付いてないと思う。
その先には私のくるまがハザード点滅して停まってるんだから「アイツ、やっちゃったんだな」ってのがバレたに決まってる。
「俺が先に擦ったから後から来るてめぇらは事なきを得たんだぞ」と言いたい気分である。
「この石、退けといた方がよくない?」
私もそう思うが、こっちが先に接触して犠牲になったのが気に入らない。誰も人がいないのをいいことに言い放った。
「このままにしときたいね」
そう言いながら路肩に移した。
さて、この場にずーっといるわけにいかない。
だがくるまの底部が気になる。
地元ディーラーの担当者が「弊社の営業所に連絡してウチが指定する修理工場で修理しないと云々」とか何とか言ってたのを思い出したのよ。
くるまに戻って地元のディーラーに電話した。「会津から栃木に抜ける山間部の国道で落石を跨いだ。どっか近くの営業所で応急処置をして欲しいのだが・・・」
この「石を跨いだ」が、落石にでくわした、ぶつかった、かのように伝わったがさにあらず。踏んではいないけど跨いで擦ったんだ。
実際は別の石を踏んでいます。その石は割れてた。
地元ディーラーは担当者が不在で、電話に出た女性にこの街道筋に近い営業所を検索して貰ったのだが。
「いちばん近い営業所ですと・・・」
「何?郡山か宇都宮北だと?」
近くともいえないがそこしかないそうだ。那須や大田原、矢板辺りには無かった。じゃぁ様子を見ながらゆっくり走行して宇都宮まで持ってくしかないな。
「宇都宮にするから営業所に伝えておいてくれないかな」
車体の底を覗いたらパンクしてないし洩れてもいないので、では宇都宮に向おうとスタート、坂を上った。
山王トンネルを抜けたら下り坂になるのだが、何だかカサカサ音がするのである。スピードを上げると音が鳴る。
途中、道の駅しおばらでWC休憩、そこでも下を覗き込んだが特に異常は見られなかったのだが。
西那須野塩原ICから東北道に入って80kをキープ、いつから制限速度120kmになったんだ。
オカシイ、どのくるまも私を追い抜いていく。軽にまで抜かれた。
矢板ICで下りて、4号線を片岡、宝積寺、蒲須坂、氏家と南下して、入り難かった宇都宮北営業所へ滑り込んだ。ディーラーからは「宇都宮営業所に連絡しておきました」と一報が入っている。
「伺っておりますこちらへどうぞ」
通された待合はこんな感じで、地元のそうだがホテルのロビー、ラウンジみたいである。
ガタイのいい営業マンが来て、
「落石に遭ったと言ってましたが」
「跨いだんですよ」
くるまが高々とUpされていた。下から覗き込んだ。へぇ、くるまの底ってこういう風になってるんだ。アンダーカバーが裂けて落ちかかっている。
中を覗いたら、エンジンオイルのバルブが傷ついていた。
走行中に何か音がすると思ったらアンダーカバーが破れて落ちそうになり、それが走行する風に煽られてパタパタしてた音だったのか。なるほど軽ですら追い抜いていくわけだぜ。後方を走るくるまからはそのパタパタが見えたのだろうよ。
幸い、走行に支障をきたすほどのものではないらしい。
「カバーは全て外します。外すことで若干水が入る可能性はありますが。」
「今日はもう降らないだろうし。真っ直ぐ戻ってディーラーに出しちゃうから。」
「カバー処分しちゃっていいですよ」(ジャン妻)
「カバーを持ち込むことで事故の証明にもなりますので、袋に入れますので地元のディーラーにお持ちください」
それがこれですよ。これを後部座席シートを倒した状態で上に載せて運んだの。
これは夕方に滑り込んだ地元ディーラー、その場で預けたわけですよ。その場で修理できないので工場に廻すって言ってたね。
ディーラーは1国沿いにあるんだけどバスが1時間に2本しかないのでタクシーで帰ったのよ。
さて、修理費を保険適用するか自費にするか。くるまの保険はジャン弟が長年勤める大手保険会社なので電話してみた。
「石を踏んだぁ?」
「踏んでない。跨いで擦った」
「警察は?」
「呼んでない」
「呼ばなかったの?事故証明は?」
「だって会津の山ん中で、警察なんてないモン」
いちばん近い警察、交番、派出所は南会津警察荒川駐在所と那須塩原警察署塩原交番だった。そこから山王峠までスッとんできてきくれたかなぁ。
「それだと事故証明にならないしなぁ。聞いてみるけど大分、保険の査定が下がるよ」
保険料が高くなるってことだな。
なるほど、確かに事故証明にはらなない。落ちてた石に擦っただけで、物損でもないし。
「痛い出費だが、今回は自費かなぁ」
こういうときでもジャン妻は前向きにしか言わない。「あの程度で済んでよかったと思いましょう」って。
そしたら例の中古車BMの開いた口が塞がらないニュースが出たわけですよ。
業界ではよくあることなのかね。ウチのディーラーメーカーだって2021年9月に不正車検が発覚しているからね。増加する仕事量に対しエンジニア人員の増強が追い付かず、慢性的な高負荷状態であったにもかかわらず、会社が適切な対応をしてこなかったことに要因があった・・・
「現場の疲弊と物言えぬ社内風土か・・・ウチは?」
「ウチはそんなことないわよ」
「物言えぬ私」
「何処がよ」
ところが何も途中経過を言ってこないので、こっちから電話してどうなってんのか、概算で幾らかかるのか聞いたよ。
だいたい16万円だって。自費にすることにした。
引き取りに行ったのが29日(土)で、営業担当者と話したのが、前のテーブルの石を指して、「こんな石だった」
「こんな感じの石でしたか?」
「あれは絶対に自然の石じゃない。先に峠を越えてった産廃トラックか何かがオトシてったんだろうよ」
営業さんは私が言うところの「誰かのせい」を否定はしなかった。営業だから、顧客が頑として言い張ってるのを否定はできないよね。
そして修理明細を見たら、ざっと主だったのは、
エンジンアンダーカバー、リヤカバー、フロアカバー、オイルパン、シールパッキン、オイルバルク、その他、部品代がおよそ51983円、技術料がおよそ113358円、総計165341円!
電話で言ってたとおりの値段だな。その場でカード決裁してた。
「いつ落ちるの?」
「来月、いや、再来月かな?」
「何でそんなにかかるんだ?」
「クレジットだからよ」
「キレイになったなぁ」
「洗車してくれたんでしょう」
私は自分で洗車というのをしたことのない人間であります。洗車なんて水の無駄だと思っている。あまりの汚さに蕎麦宿の主人が見かねて、息子さんと2人で洗車してくれたことがある。私はキレイになったのにすらまったく気が付かなかったのだ。
くるまがなくて2週間買い出しに行けなかったので、ビール、ウイスキー、米、調味料、WCペーパー、重たい野菜類、かさばるものを買い出しに廻った。
「アナタの発言のせいよ」
「???」
「宿を出る前、あのくるまを出せなかったお爺さんの運転を、ヘタクソとか免許返納した方がいいとか悪態ついてたじゃない。そのバチが当たったのよ」
「それでかぁ?」
「そうよ」
「まさか」
「そう思いなさいって」
「・・・」