2023/04/30
サム吉
地方の街道を走っていると、ときに場末感満載で「大丈夫かこの店?」「営ってんのか?」疑わしい店に出っくわすことがある。
この廃倉庫みたいな店は、国道408号線をつくば市に向かって北上する途中の右手にあった。この界隈ロード沿いに飲食店は殆どなかった。よく行く梅島の珍来の暖簾分けがあったけど定休日でこの店しかなかったのである。
シャッターに落書きの跡があるし。
店内に暖調の灯りが下がっていた。線香花火の最後の灯みたいである。
店を出てから気が付いたんだけど、営業日は週4日のみ、営業時間も昼のみ。極端に短いのです。
初回であるこのときも既に2時過ぎてたんだけど、この営業時間に気がつかず入っちゃったんですよ。そした目をギョロッと見開いてるけど口許ニッコリの老店主と、サブのお婆さんで営っていた。
券売機がこれです。これはどっかのコインパーキングの中古だろうか。おっそろしくクラシックな券売機で、お札は千円札のみなんです。
操作方法は至って簡単で、①千円札を、「シワを伸ばしてから入れてください」、②注文するメニューナンバーを入力、③発券ボタンを押すという珍しいタイプです。
メニューは店外にも席にもなく、券売機が置いてある壁の左上にあって、
ラーメン1種類しかないのだ。ラーメン10番しかないから必然的にそれにするしかなくて、イチ、ゼロを押し発券ボタンをONします。
他、トッピングはしなかったけど、煮豚(チャーシュー)は50だから、ゴ、ゼロ、メン竹(メンマ)は51だから、ゴ、イチ、ですね。
のり、52、ゴ、ニ、
煮卵、53、ゴ、サン、
ミニ焼き豚丼、60、ロク、ゼロ、
夏だけのカキ氷70、ナナ、イチ、半ライス80、ハチ、ゼロ、ライス81、ハチ、イチ、のようにひと桁ずつ押すのです。出て来た券を置いて今度は麺のタイプを決めます。
①普通麺、
②素麺より細いけどコシが強い極細麺、
③幅の広いピロピロ麺?これは喜多方ラーメンか佐野ラーメン風なんだろうと想像、
私は、
「普通で」
「ハイ、普通めぇん」
ラーメン1種類しかないので、3種類の麺でコールするわけですな。
店内はこんな感じ。奥はホントの倉庫、物置かなぁ。
街道沿いによくある果樹園からもぎとった果物の即時販売所に似てるな。
枯れた店主が茹でて丼にあける所作はゆったり見えたけど実は手早くて、サブのお婆ちゃんが具を載せる方が時間がかかったという。
「普通麺お待たせしました」
麺を引きずり出す前にこうやって具の写真を撮ってたら麺の量が少ないのに気がついた。
すくいあげてみた。こりゃ100gぐらいじゃないかな。
店内に謳ってますが、スープは完全無化調で、良く言えば健康で上品、逆に言うとトテモ薄味、その折半で言うと、クドさが全くないというかゼロといっていい。
ところが伏兵というかアクセントがあって、煮豚(チャーシュー)が肉々しいのだ。こっちの方が塩気が、味が強いのです。チャーシュー丼が別途メニューにあるくらいだからね。麺と煮豚を一緒に食べて何とか塩気がちょうどよくなる。
もうひとつ強烈なアクセントがある。別皿でついてくるのですが、
青唐辛子なんですよ。
「辛いですからお気をつけ・・・」
???
これトテモ辛いです。アタリマエか。ムセそうになった。喉にひっついたら悲惨です。このタイプのラーメンに合わないような。無くてもいい気がするな。
「じゃぁ今日はもう大丈夫だから」
「あ、平気ですか」
「ウン、また来週お願いしますね」
サブのお婆さんは帰ってった。そしたら店主と目が合って、
「替え玉どうぞぉ」
「えっ」
替え玉1杯無料なのをこのときになって気付いた。私は替え玉をしたことって片手で数えるくらいしかないのだが。このときは店主の笑顔と飄々した態度にツラれて、
「じゃぁお願いします」
「麺はどれにされます?」
「ええっと、同じ麺で」
で、こうなりました。何だか生のインスタントラーメン、具無しに見えますね。もう営業時間過ぎてるし、麺を残すのがもったいなかったのかな。なぁんて思ったりして。
店主の気遣いなんだろうけど、最初から麺の量を倍に増やして900円にするか大盛りに対応するか。でもそれだと客が来ないかな。800円でギリで替え玉1杯無料の方が意外性があって客を取り込めるかもしれない。
無化調なので好みは分かれるでしょうね。週4日の日中しか営ってないし店主もご高齢だしバリバリ営ってる感はない。飄々としています。それでいてコアなファンがいそうな感じもしないでもない。
また来てみたいと思わせる感もなくもないけどな。
素朴なスープでした。800円で麺100g、それでいて替え玉1杯無料、合計200gはないと物足りないですね。
店を出てから口の中と消化器系に残った印象はとにかく素朴で優しいということ。ですが営ってる日や時間帯にあたる確率が少な過ぎて1回こっきりになってしまっています。