2023/11/11
南千住の生駒軒
日比谷線の三ノ輪橋で下りた。地上に出た。
銀座で乗り換えた日比谷線が北千住止まりだったから。そっから先まで行く電車だったら、梅島の「珍来」だったのだが。二者択一で第二候補の三ノ輪橋になったのですが。
ではそれが何かといふと。
これなんですよ。
最寄り駅は三ノ輪橋だが、通りの名は南千住仲通り商店会という。そこにクラシック過ぎて敬遠したくなるくらいに見事な「生駒軒」が佇んでいる。
あるのは知ってたけど、すぐ近くに立ち食いスタンドの「長寿庵」があるし、どうもこの店は入るに躊躇しちゃうところがあるよね。
生駒軒はチェーン店ではなく個人の暖簾分けだから、店が老朽化したり、店主が健康を害したり、後継者が不在だと閉めざるを得ないという。
この南千住仲通りにある生駒軒も、そんな空気が垣間見える。
失礼ながら、店はボロ、お世辞にもキレイとは決していえない。年期が入ったとか、歴史を感じるとかそんなレベルじゃないです。
キレイなのは外の赤い暖簾だけじゃないかな。
通りの向こうから来た男性2人に続いて暖簾を潜って店内に入ると、壁際の2人テーブル席に常連さんが2人いて、緑茶杯かウーロンハイをグビグビ飲っていた。タバコのニオイがした。
私はカウンター右端、先に入られた男性2人が何にしようか迷ってる隙に、初めての店のオーダー必須のラーメン&チャーハンを言ったら、
「セット?」
「ああ、それにします」
私にオーダーの遅れをとった男性2人は同じく特別セットのラーメン&ミニカつ丼であった。
メニュー載せます。低価格だね。メニューの真ん中に特別セットがあって、これはトテモ安いなと。港区や中央区の比じゃないね。
女将さんが中華鍋を振るいだした。ひとりオペなので、壁際の常連さんの「緑茶杯お替り」もすぐには対応できず、笑顔であしらっている。
女将さんのひとりオペ?そりゃキツいな。旦那さんはいないのかな。ひとりで店を切り盛りしてるのだろうか。この後、1席ずつ間を空けて満席になるんですよ。
スポーツ新聞が置いてあったが、コロナ禍のせいでもう誰が触ったかわかんない新聞を手に取ることもなくなった。
紙でも感染媒体なんですかね。この間、ウチの支店で見たのは、1000円札を1枚置いてあるトレイがあって、
「こんなとこに置きっぱにして。私が出来心でネコババしたらどーする?」
不用心にこんなとこに置いとくんじゃないという意味で言ったんだけど、そしたら「コロナの方が支払ったお札なんで」と返ってきたものだよ。そんなことを言ってたら電車のつり革や柱なんか触れないじゃないか。買い物かごやカートも握れないだろ。ちと神経質も度が過ぎやしないか。
群馬に飛ばされる平成24年前の数年間、江東区住吉の生駒軒をよく利用してた。半蔵門線で住吉から地上に出て、生駒軒に寄ってからバスで、東陽町にある行政にカオを出していた。
住吉の生駒軒は令和になってから再訪したら「アンタ、前によくきてたよね」店主に言われたが「もう今はもう若いのに任せてるんだよ」、
その若いのが店主、オヤっさんに、店ん中で横柄な口調を利くので、何となく行かなくなっちゃったんだよな。
背後の頭上にTVがあって、この時間帯だからくだらないワイドショーが流れて・・・
・・・ではなかった。中東の武力衝突だった。
どの客もTVを見る視線がキツい。私は入口側にいてTVはすぐ背後の上にある。客たちの視線を左頬に感じる。キッと見返したら、客どもは私を見てるんじゃない。視線が斜め上のTVの方向を見てる。
それまでひとりでオペしてた女将さんだが、外から旦那さんが戻ってきて厨房で合流、そこからオペが手早くなった。
「遅かったわね何処で道草くってたの?」ぐらいは言ったかもしれない。もしかしてで出前もやってるのか。
すぐ後から来た客、ひとり、またひとり、ラーメンと半チャーハンが被った。
もうひとり、ビールと何かの炒め物で「ピーマンとニンジン抜いてくれぇ」
「それだと入れるモノがなくなっちゃうよ~。笑」
殆ど満席になった。
あっさり醤油、予想通り、裏切らない味ですが。
昭和の頃になってスーパーに出るようになった生麺に似てるな。それまでは乾麺ばっかりだったからね。
平成生まれで令和になってから社会で生きる若人にこの味、路線はどうだろうかな。
それはこの店の客筋にもいえそうだ。この店に若くて気の弱い女性が来るどは思えないが、間違って入ったら逃げ出すだろうな。
少ない量だが、美しい半球形の盛り付けですな。
細かいチャーシューがゴロゴロしている。
まぁ普通の美味しさで、レギュラーサイズで食べてみたくなる味ではある。
空いた丼と皿を上に置いて、ごっそさん、ひと声かけて、返ってきた「ありがとうございました」の優しい声音。常連さんたちは皆、このご夫婦に甘えてるんだろうね。
店内喫煙可だったので、お客全員が喫煙者だったら少々キツいかもなぁ。