2023/11/15
日本一
東急多摩川線の武蔵新田駅改札を出てすぐ、環八に面した角地に非常に自信に溢れた名前の店がある。
何が日本一なのか。
ラーメンが日本一美味しいのか。
ぜぇんぜんそんなことはないです。日本でいちばん美味しいとか、日本一に輝いたとかじゃないのだ。
至って普通の味です。「日本一」という名前の中華店なだけです。
10年前に数回利用した。足が遠のいたのは店と何があったわけではなく、東急多摩川線を利用する公用がなくなったから。10年振りに訪問したのは単に気紛れただけ。
店員は年配の方が3名、10年前は2名であまり仲の良くない?漫才コンビだった。
その2人は今日も健在だったが、10年前よりお互いが労り労い仲が良さげに見えたのは、10年経って身体のどっかにガタが来て、相棒が倒れられたら困るから気を遣うようになったのだろう。
メニュー載せます。笑っちゃうくらい自信満々なキャッチコピーが描かれています。
麺類には「どれも一度は食べてみたい麺」
炒飯や丼ものは、「今日も元気に御飯もの」
一品料理には、「日本一吟味の料理」
餃子、ハーフチャーハン、ミニラーメンには、「色々な組み合わせで楽しい」??
いちばん下には「日本一自慢の餃子をぜひどうぞ」とありますが、日本でいちばん美味しい餃子じゃないですよ。日本一という名前の店が餃子を自画自賛してるだけです。
メニューを返すと、ランチ時間帯とセットものが描かれてある。
「日本一のサービスランチ」、AM11:00~PM3:00、まるで日本でいちばんのサービスランチのように錯覚してしまうが、鳥唐揚げと揚げ餃子の「ミックス唐揚げ」がウリでもあります。
ラーメンセット890円、ミックス唐揚(鳥と揚餃子)、小ライス、ランチ時間外だと990円、
「カッコ」内のキャッチコピーが大袈裟で自信過剰だがややズレてもいる。
生姜焼定食890円は「当店人気ナンバーエアンの生姜焼を更にグレードアップさせて登場!!スタミナバッチリ」
何をどうグレードアップしたのかわからないが、ランチ時間外だと100円高くて990円なので、グレードアップというよりは価格減だと思う。目玉焼きも付いてきます。
レバ焼定食990円「体を助けるレバーを食べようスタミナモリモリ」思わず吹き出してしまったが、これも目玉焼き付きです。
肉ナス定食990円「ナスを味噌でやさしくからめた」何だか艶めかしいキャッチコピーですが素晴らしいコピーセンスだね。でも目玉焼きもミックス唐揚げも付いていません。
ここから値段が高くなります。チャーハンセット1050円には「この組み合わせを御賞味ください」そう書いてあるので私はこれにしたのですが、どんな組み合わせかというと、ミニラーメンとサラダなんですよ。
「満腹感の」焼きそばセット1100円、焼きそば、ハーフチャーハン、玉子スープ、焼きそば&チャーハンという組み合わせはありそうでないです。東新宿の「太和飯店」でこの組み合わせのワンプレートがあるけど、2種炒めるので手間が倍かかるからね。
このセットは女性限定なのかな?「あなたの美容と健康に」レディースセット1100円、ミニラーメン、ハーフチャーハン、ミックス唐揚げ、サラダ添え、
サラダはわかるが唐揚げが美容にいいとは思えないけど。
「今日からのスタミナ源に」青椒肉絲丼セット1300円、これもミックス唐揚が付いてくる。凄い組み合わせだと思う。でも「今日からのスタミナ源」と言われてもねぇ。
極めて短く「今日はリッチに」日本一セット、エビチリ、ミックス唐揚げ、ミニラーメン、ライス、お新香、これが最高値で1500円、このクラスの店でもエビがいちばん高いんだね。
10年前、今厨房にいるオヤジが私の隣に座った客に「今日、競馬行ったの?当たった?当たったならエビチリいこうよエビチリ」って示唆したのを覚えているよ。
そのオヤジが私の麺を茹でてたんだけど、見て驚いたのが、業務用のラーメンを長袋から適当に引きずり出して、茹で時間が僅か5秒、10秒なかったと思う。
博多ラーメンでいうところの粉落としといっていい。サッと引き上げて台の上に置いて、危ない手先でゆっくりと具を載せていた。
チャーハン、ハーフラーメン、サラダ、3つが同時に置かれた。
あまり美しくないチャーハンですね。
イロがマダラ、味ついてなさそうな白い飯もあるが、食べてみると、アブラでコーティングされ、塩胡椒が満遍なく降りかかっているので、辛うじて完成された料理なのがわかる。
ニンジンが混じっているのは特筆ものだがね。
サラダにはキャベツ、タマネギ、チャーハンに混じっていた刻んだニンジン、カイワレ、ちぎったレタス、ドレッシングは和風かオニオンだったような。
ミニサラダじゃなかったですよ。ホテルの朝バイキングで自分が盛りつけるだけのボリュームはあった。
ラーメンとチャーハンだけだと罪悪感や偏食意識がジャマをするが、サラダがあるとそれが薄れる。こういう組み合わせってないですからね。
ハーフラーメンは、うずら、海苔、メンマ、かいわれ、ネギ、なんとなく薄味の鶏ガラスープを想像できちゃいそうだが、鶏ガラスープか和風か微妙だな。優しい味であっさり薄味です。
中太の縮れ麺、固めの茹で加減っていうかロクに茹でていませんからね。
食べているうちに柔らかくなる。この程度の具をあんなにスローな手先で載せても麺が伸び難いわけで、全く別な3つを同時に出せるのはこういう麺を固めに茹でるからでしょうな。
空いた器は上にあげた。会計時に、
「10年ぶりだよ」
「え?それはどーも」
まだ営ってたんだ、とは言わなかった。
最初に入る客は100%名前に釣られるんだろうね。
でも入ってみれば日本一でも何でもない。そういう名前の店なだけです。味よりボリュームと意外な組み合わせがウリですね。
「日本一」とはインパクト絶大だね。恵比寿「天下一」みたいなものだろうか。実は私、10年前、最後に来たときにオヤジに聞いています。
「何で日本一ってつけたの?」
「うん?うん?それはね。大きく出たのよ。日本一ってつけたら忘れないでしょ」
確かに忘れてなかったしな。