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なべや

日曜日の夕方、私は不意にジャン妻に言った。
「明日、なべや取ってよ」
「えっ、また?」
「もう1回行きたい」
「となるとアタシ3回目だけど。それも3週連続よ。何でまた?」
「今、こないだのなべやの記事書いてるんだけど。写真見てたらまた行きたくなってウズウズ」
「!!!」
日曜日だから店は営ってないし、ネット予約なので、開いてみたら空きがある。
2名ONしたら取れちゃったのだ。
こないだの肉肉コースではなく、その下の何だったかな。何かアラカルトを1品か、締めにパスタでも入れようかねぇなんておおよそ決めて向かった。
薄暮1新橋薄暮2柳通り
わかり難い路地だが、もう迷わず行けたぞ。
店1店2店3メ店4店内1店内2
18:30に階段を上がってったらマスターひとりだった。前回いたサブの子はいなかった。
マスターはまだスタンバイになってない。ギリ仕込みの途中みたい。
「いやぁ、厨房は暑いんですよぉ。蒸しますしねぇ」
ボヤきながらコックコートを身につけるマスター、
「あれ?先週?」
「アタシ、3週連続で」
「じゃぁテーブル席どうぞぉ」
とススメられたが固辞、
「カウンターがいいんですか。たまに今日みたいに空いてる日はテーブル席の方がよろしいかなぁと思ったんですが。カウンターでよろしいんですか?」
マスターの口から「今日みたいな空いてる日」だって。そうやって口に出すと混みますよ。そういう予感がした。実際後になって混んできたんだけど。
「今日はひとりで営ってるんですか?」
「ええ、先週いた子に逃げられました・・・嘘です。信じないでください。材料が足りなくなったんで今、その子が買いに行ってます。すぐ来ます。来ます。来てくれなきゃ困ります」
そう言いながらマスター自ら生ビールをサーバから注いでいる。
店内3マスターひとり
しばらくしたら階段をドカドカ上がる音がして、サブの子(Mさんといいます。)が間に合った。後で聞いたらバイトじゃなくて社員なんだそうである。コロナ前から社員だったとしたらよく我慢したな。
「逃げられたって言ったらお客さん信じかけた」
「アハハハ、笑」
逃げたらマスター困るモンとか言ってましたね。
里芋、刺身蒟蒻酢味噌、つくね汁、刺身、かき揚げ、ここまではこないだと同じで、
「この後、少し変えます。何にしようか今、考えてます」
最初の膳1最初の膳2汁1汁2汁3汁4汁5汁6刺身1刺身2刺身5刺身4刺身6刺身7
刺身はどれもいいネタですね。魚の目利きも素晴らしい。プロなんだからアタリマエか。
「でも何処で水揚げされたんだろ。福島かな?」(小声で)
「さぁねぇ」(ジャン妻)
誤解を招きたくないので小声で言いましたが、福島なら大歓迎ですよ。福島の処理水は(誰だっけ?何とか水なんて言ったお爺ちゃん大臣は?)安全基準を大幅にクリアしてるんでしょ。
大陸が日本近海の魚を食べなくなるのは輸出減でダメージ大かもしれんが、国内消費プラス、日本近海での乱獲を抑制する方向に舵を切れば、水産資源を守るという意味でよいのではないか。
食べながら思った。日本で捕れるんだから日本で食べようぜって。消費しようよ。
食べたくない人は食べなきゃいいんだけど私は気にしない。だって福島だもの。福島の原発の電気は東京に来てたんだろ。
でも私が食べる魚の量なんて高が知れてるよな。と、まぁ、政治や時事ネタはさて置いといて何だか混む気配である。「今から入れますか?」電話もあったし。
「今日みたいな日は楽できるかなぁ思ってたんですがねぇ」
予約は通常より少ないらしい。ヒマだろうなという甘かったか見込みを口に出すと混むのかもしれないとさっきも予感したらホントに混んできちゃって。
予約2組で4名、飛び込み女性客が2名、そのご新規さんにはMさんが対応「何を見てウチをお知りになられました?ウチは明確なアラカルトがなくて。コース料理をベースに足りなければ追加していただいて」
なるほど、やはりそういうスタイルなんだ。アラカルトだけだとめんどくさいからね。特にこの規模の店だと。
「お酒飲まれますか?ウチに置いてあるお酒は・・・」
こないだガーンときた花泉原酒、玉露は避けたいな今日は。
ニュー新橋ビルに姉妹店があって、マスターはそこに電話して「あ、彼来てるの?そっちの後でウチ来る?来るんなら何々を持ってきてくれないかな」
そのお客さんが持ってこさせたのがこれ。
郷土料理
「イカニンジンです。福島の郷土料理です」
いかにんじん?
知らん。初めて知った。
これ、松前漬みたいなものです。何でこれが福島の郷土料理になったか。福島県の中通り、宮城県に近い現在の伊達氏簗川町に、文化4年(1807年)蝦夷地松前にた松前藩松前家が転封、国替えされた。
それまで蝦夷交易の運上金を得てウハウハだった松前藩(松前家、旧蠣崎氏)にとっては改易に等しいものだった。蝦夷地召し上げともいうそうです。
転封理由は、①密貿易説、②藩主の放蕩による懲罰、③異国船への警備を怠った、④幕府が蝦夷地を直接支配して交易を独占し、北方警備を強化する方針をとった、等々らしいが。①ぐらいはあったでしょうな。
それまで米が取れない蝦夷地に於いては、家臣にアイヌと商業できる知行地(商場知行)を扶持していたのだが、梁川では米収入の石高制に切り替えなくてはならなくなったわけよ。
だが、米の収入なんてのは上限が決まっており、取れ高が減っても増えることは殆どない。藩にとっては減収でしかないので、少なくない数の藩士が除籍、解雇になったというんだな。
松前家は蝦夷地への復帰を働きかける。幕閣に有力なツテがあったのか、袖の下が効いたか、幕府の役人が極寒の蝦夷地で常勤するのを厭うたのかわからないが、転封から15年後の文政4年(1821年)にそれが叶うのである。蝦夷地は松前家に返還された。
松前に帰る際に、奥州で採れたニンジンを持ち帰り、松前漬と併せた。蝦夷地と簗川との往復で生まれたのがイカニンジンなのだ。藩が懲罰で転封、何とか復帰したすえの産物だもいふ。
郷土料理=家庭料理なのです。信州松本にある塩いかキュウリと一緒で、家庭料理が接客料理に化けたようなもの。それまでは店で客に出す料理という性格は薄かったんだと思う。
でも会津若松「麦とろ」店主が言うように「東京の人は美味ぇモンばっかり喰ってっから、こういうのが出るんだよなぁ」言うのも頷ける。
これを支店から持ってきたのはホロ酔い状態の常連さんで、マスターが私に紹介するには、
「こないだ話したお客さんの地元、T塚の人」
確かにそんな話をした記憶がある。だがT塚どころじゃなかった。もっと先の枝葉の先を突っ込んだら、
「市営地下鉄の〇〇駅です」
「What!」
「何でそんなに驚ぁれるんですか?」
ホントに地元で近所、ときどき載せる「小学校正門前にある声のデカい婆ちゃんの店」もご存じだったな。
そう言われるとどっかで見た気もする。引退した町内会自治会にいなかったかな。
かき揚げ1かき揚げ2かき揚げ3かき揚げ4
Mさんが重たそうに、でも軽々と一升瓶を抱えて「よいしょっ」上からトクトクトク、
Mさんは「よいしょ」が口癖です。
「よいしょ」・・・トクトクトク、一升瓶から注ぐ音です。
「もうちょいもうちょい・・・(トクットクットクッ)・・・上手くいったぁ」
有限会社峰の雪酒造場、純米酒、「ロハ酒」だった。ロハシュ?
新しい酒にカタカナで、語尾にシュがつく銘柄つけるのって流行りなのかな。サバデシュとか。
さけ
サラダ、野菜も出るんだこの店。
「どっかの木」の朝サラより盛りがいいじゃないか。上に生ハムも載ってるし。
潰したゆで卵も。
サラダ1サラダ2サラダ4サラダ5サラダ6サラダ7
カリッと焼き上げた唐揚げにギリ近いチキンソテー、ソースは薄めの酢豚に似たソース、
チキン1チキン2チキン3チキン4
いつものステーキ、ソースもこないだと一緒、
「肉か魚かお選びください」って言われて、魚をチョイスしたら別注でなきゃ肉を出さなくなった「どっかの木」のステーキに似てる気がする。
ビーフ1ビーフ2ビーフ3ビーフ4ビーフ5
コース料理が出て落ち着いたマスターがボヤくには、
「コロナで客層もお客さんの酔い方も変わりました。今はもう上のひとが後輩を連れて来なくなりましたね。」
「もっともそういう関係の方が来られても、店の終わり頃の時間に仕事の話で部下に絡んで、ヘンに盛り上がったりしてたのですが、それもなくなりました」
「今は女性の部下が男性の上司に絡んでますからね。強くなりましたよ」
女性が強くなった背景には、今の時代は何をやっても下手すりゃハラスメントに結び付くので、男性が女性を誘い難くなったのもあるのではないか。
ましてやこういう隠れ家みたいなダイニングではね。公道に面したワンフロアで大きい店ならそういうアヤしいロケーションではないしね。

「まだイケそうですか~?」
いけそうです。
「じゃぁパスタ」
「パスタか。何にしようかな。パスタパスタパスタ・・・」
呟いてこれにしようと決めたらマスターの目が光って、茹でながらソースを仕込み始めた。カチャカチャ玉子を溶きだしたので、カルボナーラだなとわかった。
スパ1スパ2スパ3スパ4スパ5スパ6スパ7スパ8
アルデンテです。
西新宿のロメスパ「くぼやん」でも食べない。
くどくないね。牛乳か生クリームを使ってるのかな。そういうのすらわからない。

会計は「あれ?こんなにいったかな?」マスターのこの台詞が曲者です。いったかな?ったってこっちは言い値を支払わなきゃならないんだからね。
お隣にいる地元民さんに「では地元で出くわしたらお互い知らん顔しましょう」と煙に巻いたが。
「アナタは基本、人のカオを覚える人だから、挨拶くらいするでしょ」
「挨拶というか、会釈くらいはね」
店5振り返る夜はこれから1夜はこれから2
「何でこの店、アナタのツボにハマったの?」
「つくねスープ、刺身、かき揚げ、肉類、麺類(パスタ)好きなのが全部あるからだよ。」
それでいて椎茸、ゴーヤ、茄子、嫌いなのが無いからね。
会津繋がりなのも大きい。地元民さんとの邂逅はまぁ偶然で、これから毎回毎回出くわすもんでもないだろ。
ジャン妻は、初回の会社の上長、翌週が昨日Upした記事、3回めの今日、都合3週間で3回である。
「少し間を空けましょうよ」
でないと、これまでの店が遠くなってしまう。ま、たまには浮気もいいだろ。こういう浮気はね。
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